いわき市「癒しのコンサート」報告

桐朋音大OGのプロ演奏家によるコンサートが、大震災と原発事故の被災地のひとつである福島県いわき市で、被災者の方々をお招きして開催されました。世話人として奮闘したF組OBの高宮修君からの報告の内容を転載します。


●●●●●「癒しのコンサート」報告書●●●●

2011年9月17日(土)、福島県いわき市にあるリバイバルクライストチャーチにて、「癒しのコンサート」が開催された。
目線を上げると窓の向こうに青い空と雲が見え、その窓から明るい日差しが降り注ぐロマンティックな空間だ。「これぞ教会」と思えるような、可愛らしくも清々しい雰囲気がクラシックコンサートにうってつけだった。今回のコンサートを機に教会のグランドピアノもオーバーホールされ調律も行われた。


開演時間が近づくにつれ、地元の方々が続々と集まり、定員80名のところ90名近くのお客様で講堂が埋め尽くされた客層はご年配のおじいちゃん、おばあちゃんがほとんどで、次に小さい子供を連れた家族連れが多かった。中高校生の元気な女の子たちの姿もあった。

14時になると、リバイバルクライストチャーチ・大越牧師のご挨拶の後、主催の高宮氏からの一言があり、演奏家の2人が入場。ヴァイオリンの横山奈加子氏とピアノの佐々木京子氏は、お二人とも桐朋学園大学の出身で、学生時代からの友人同士だという。シンプルで上品なブルー系のドレスを着た2人はまるで姉妹のようで、演奏の息もぴったりだったが、合間に挟むトークでも会場の雰囲気を和ませてくれた。


開演直後は世界トップレベルの演奏にやや緊張気味だった会場の雰囲気も、時間が経つに連れて音楽と一体化し、リラックスした空気になった。目を閉じて静かに耳を傾ける人、涙を流しながら聴く人、隣の席の人と楽しさを分かち合う人・・・。演奏が始まる前は退屈そうにしていた小さい子供もいつの間にか音楽に集中していたようだ。
さらに嬉しかったことは、開演後しばらくしてプログラムに入っていなかった曲目が追加されバッハの「無伴奏パルティータ第3番よりプレリュード」が演奏されたことだ。


コンサートの後半、日本の歌の演奏が始まると、会場中が大合唱になった。1曲目の「からたちの花」は小さな声で歌っていた人も多かったが、2曲目の「夏の思い出」になると一斉に歌い始め、3曲目の「花の街」、4曲目の「さんぽ」は、演奏家二人が驚くほど合唱団のようなきれいな声が講堂に響いいた。ほとんど初めてその場に居合わせた人達が心を合わせて一心に歌う様子は本当に感動するものだった。この瞬間に、何人もの人が癒されたことだろう。


休憩時間には、神奈川県の洋菓子店「Gatoh」さんがこのコンサートのために特別に作ってくださったクッキーが配られた。形はピアノとヴァイオリンの2種類で、鍵盤や弦の模様まで細かく描かれた渾身の作で、食べるのがもったいないほど可愛い。
また、教会の方々がジュースやコーヒーなどの飲み物や、お菓子まで用意しておいてくださり、休憩中にお客様に振舞ってくださった。これには主催者側の私たちも感激した
が、子供連れのご家族はどれだけ助かったことかと思う。また、ピアノの脇に置いていた立派な百合の花束も、教会で用意してくださったことを書き添えておきたい。


ピアノとヴァイオリンの美しい音色に聞き入り、歌曲では演奏に合わせて楽しく歌い、としているうちにあっという間に時間が過ぎ、アンコールではバッハの「G線上のアリア」とパラディスの「シチリアーノ」の2曲が披露され、大喝采の中、終演となった。
真っ白な教会の礼拝堂という空間の中で演奏家と観客が会場一体となり、心が満たされたひと時だった。

会場を後にするお客様の晴々とした笑顔にスタッフ一同、改めて喜びが溢れるのを感じた。多くの方の様々な形でのご協力のもとにこのコンサートが開催できたことを、心から感謝申し上げたい。


コンサート終了後は大越牧師の引率で、リバイバルクライストチャーチから車で数分の仮設住宅地区にご案内いただいた。夕暮れの美しい時間帯だったが、小高い丘の上に木造やプレハブのこじんまりした大量の住宅が整然と並ぶ様子に、胸がいっぱいになった。これでも、まだ必要収容率は半分に満たないと言う。これから寒くなる季節のご苦労や、広さや設備等の様々な不自由さは想像を絶する。現地の方々のご苦労をいつも心において、その時々にできる支援や活動をひとりひとりが続けていくことの大切さをひしひしと感じた。


「癒しのコンサート」開催の為に寄付をされた方は、37名、230,000円(当日教会の寄付箱に寄付をされた10,395円を除く)になります。地球の裏側アルゼンチンからも寄せられました。
使用用途は、演奏者、支援者交通費、弦張り替え代、集客経費など、138,989円。残額の91,011円(+10,395円)は、希望の多かった来年度での、無料コンサートの再実施の為に使用させていただきたく存じます。


今回のコンサートの集客にあたっては、東日本大震災復興NPO 日本ユニバ震災対策チーム、及びNPOWunderGroundの絶大なるご支援いただいた事をあわせてご報告させていただきます。

皆さま、有難うございました。

                  文責東北ライジング高宮、山本
                  
                  富士通(?)有志ボランティアの会金成